コーチ対談1
《新シーズンの手応え/スローガン「挑」について》

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コーチ対談


昨シーズンは六大学対抗戦で女子が2期連続総合3位獲得、関東学生選手権水泳競技大会
(以下関カレ)にて21年ぶりに男子1部総合3位、日本学生選手権水泳競技大会(以下インカレ)
にて男子が史上初の800mフリーリレー5位入賞といった結果を残し、一年間を通して他校にも
慶應の勢いを感じさせるシーズンとなりました。これらの素晴らしい結果は選手自身の努力は
もちろん、マネージャーや学生コーチの大きなサポートあってのことです。そこで今回は
学生コーチにスポットを当ててインタビューを行いました。
今シーズンの目標やチームに対する思いを熱く語っています!

−シーズンが始まってから約2ヶ月が経とうとしていますが、手応えはどうですか。

野村 昨シーズンから引き継いでいる選手については、それなりの信頼関係
みたいなものはあるのかなと思いますけど、新しく受け持った選手に関してはまだ僕の軸が
上手く伝わってない感じはありますね。どういう意図でこのメニューを作ったのか、
どういう意図でどういうコーチングをしているのかということがいまいち伝わりきってない感じはあると思います。僕が目指している選手の選手像と、その選手が目指している自分の選手像が重なっていない、という。具体的にそう感じるのは、感想ですかね。
練習終わった後に、どのような取り組みしているかを聞いているときとか。

吉岡 それがさっき言っていた、野村がその選手に対して頑張ってほしいやり方と
その選手が頑張るやり方が違うっていうこと?

野村 そうですね。それはそれでいいとは思っています。ただそこの合致が
まだ上手くいかないという感じですね。

吉岡 「自分の軸としているコーチング」というワードがさっきあったけれど、それは
どういう軸なのかな。これまできちんと喋ってこなかったけれど。

野村 まず全体指導としては、後半に粘り強い、キックが入る、推進力が高い、という
この3つです。それは僕の全体指導におけるモットーで、それとは別に選手ごとに、どういう
目標があって、泳ぎのフォームとかも含めてどういう選手になりたいか、という。例えば前半から入っていきたいというなら、「前半のスピードをしっかり活かしていきたい」とか選手の特徴がいろいろあるじゃないですか。もちろん選手の特徴に合わせた指導をしようと日々努力していますが、僕の指導のモットーと選手の特徴・理想のマッチングがまだ少し甘いと思っています。一緒に付き添ってあげられてないというか。

吉岡 なるほど。もし一人走りしてる選手がいたら、寄り添いつつも野村の軸に
できるだけ当てはめてという感じ?

野村 自分の軸に照らし合わせてどう練習させるか、に近いですね。コーチングにおける
僕の軸と方針が似てる選手はいいですけど、全然違う選手が出てきた時にどうやって
結びつけるかということですね。今シーズンから見ている選手たちとは、あまりまだ
しっくりきていないですね。感想とか聞いていると、例えば長澤(経1)は最初から
行くタイプで、僕が理想とするタイプとは違います。そういう選手に対して僕の軸に
当てはめようとするだけではなくて、長澤でいうと持ち味の前半を活かした上で
どうしたら後半耐えられるかを考えるというか意識していますね。

コーチ対談 野村

吉岡 僕はフィーリングとか自分が伝えたいことを伝えられるか、っていう点においては
結構手ごたえはある。選手と話していても、練習が終わったあとの感想や、
「ここはこういう風にいったらいいですかね」とか「こういう風にしたらいいんじゃない」
というのはマッチしていて。ただ選手が目標を達成するための進行度合いはまだまだ
レベルが足りてないのかな。
 僕はシーズンの始めに、アンダーウォーターの強化、200mのペース配分の向上、
1ストロークの質の向上を目標にあげていて、それはみんな考えてくれている。ただ
僕のメニューも、みんなの取り組みもまだまだ甘い部分があると感じていて、例えば
丸山(法政1)はJAPAN OPENが目標と言っているけど、そのレベルにはまだ
至っていかないかな、という感じ。

野村 それはその選手のレベルが、というか佳吾さんのレベルが、ですか?

吉岡 どっちもあると思う。メニューで言えばもっと徹底してもいいかな。決めた軸に
必ずしも当てはまってない日もあるかも。
 有名なコーチや経歴のあるコーチを見ると、長年の経験で指導の軸がしっかりしてるというのもあるけど、軸がぶれないから選手は納得して話を聞けるし、コーチとして自信があるから
信頼関係が築ける。だけど僕はメニューや声出しがまだそのレベルに達していないのかな。
 例えば僕がいたクラブのコーチは、インターハイでメダルを取るレベルの選手に対して、
レースで15m潜りたいなら練習のハードで絶対20m潜れと言ったり、1分サークルで
背泳ぎ27秒で泳げる選手にも、20m潜ってないだろと言ったりしていたし。それが
正しいのかどうかはわからないけど、軸をぶらさずにこだわりを持ったコーチングを
している点に関しては、自分はまだそのレベルに達してない。選手の取り組みに
関してもまだ甘いところがあると思う。
 例えばアンダーウォーターは、レースのスピード持久力で扱えるように練習するべきなのに
甘えが出ている。スピードを無視してただ潜るだけになって、レースの速度を出す時には
練習したアンダーウォーターが使えていない。選手としても、俺としても責任があるのかな。

野村 難しいですね。クラブチームのコーチとかなら言えるんですけど。

吉岡 まぁね。確かに選手に対して上から物をいうことに関しては、学生コーチの立場では
難しいかもしれない。けれどそれを伝え続けることはできると思うから、やっぱり伝える頻度と伝え方は大切だと思う。人によってタイプが違うし、そのタイプを意識した上で話すことが
一番大事だから。タイプを考えてその人に合った話ができれば、少しずつ解決できるかもね。
そこは少し意識してる。水泳だけに限らず、根本的な私生活を含めた性格を意識した上で
話すっていうのは、学生コーチだからこそできるかなって。男子は合宿所で一緒に住んでる訳だし、練習以外の面を見ているからこそ、そこを意識していけたらいいな。

コーチ対談 吉岡

―「挑」に対する第一印象はどうですか?

野村 チャレンジですね。順調に階段を登るというより、一段飛ばしで登る感じが強いです。
いま競泳部門は転換期というか、大きなリフォーム期にあると思っていて。選手のレベルも
そうですし、選手のインカレでのシード権へのこだわりが変わったり、他大学からの
影響を受けて新たな自分に全体的に進化していこうとしている時期だと。自分たちで
リフォーム期に気づいてどう変わっていけるかが大切です。やっぱり大学の強さに
憧れて入ってくるのは大学スポーツの魅力ですね。例えばインカレで総合優勝したチームで
戦いたいから入るとか。慶應は自分をどう高めていくか、より高めるためにどうするのか、
「学生主体」という理念のもとで、他にはない形でやってみようという意識の選手が多いです。
その影響もあって他大学と比べると、大学に入るにあたっての帰属意識が低いと感じます。

吉岡 考え方のベースが自分自身ってこと?それはあると思う。

野村 はい。でも今シーズンになって今まで以上に、選手もスタッフも自分ベースの考え方から「慶應の一員として戦いたい」「インカレでシード権を獲りたい」に変化している時期に
入ったのかなと思います。シーズン初めの目標ミーティングをしていても、
Japan Open突破と口にする人が多く出てきたり。大学生として日本選手権や
インカレに出る、じゃなくて慶應の一員として日本選手権に出て活躍したいとか
インカレに出たいとか、最近はその方が意志が強いのかなと感じたりします。

吉岡 それは最終的に関カレ、インカレでチームとして戦う上で絶対に大切なだね。
確かにチーム意識については、インカレで毎年活躍するような大学と比べれば慶應は
少し劣っていると思う。去年は女子の関カレ2部が2位、男子がインカレ10位という
結果だったけれど、もしかしたら慶應よりも順位が下の大学と比べても、チーム意識は
低いかな、という感覚はある。本当に悪く言えば個人競技みたいになってしまっている
ところもあるかもしれない。だから今シーズンは全員がチームで挑む意識を強く持つ
必要があるね。あとはさっき言った、学生主体で自分が自分を高めていく場として
慶應を選ぶ選手が多い、というのは水泳だけに限らず言えることだと思う。これは僕らの
長所でもあり短所でもあって、意外と水泳以外の選択肢が多い。本当に戦うべき大学と
比べて、水泳でどうこうする意志は、少し低いのかな。だから慶應水泳部というチームの
一員として挑むというだけではなくて、自分自身への挑戦というのもある。「挑」という
スローガンには、アグレッシブに自分自身の目標へ挑む、ということも込められていると思う。
実際に他大の年末遠征の話を聞くと、慶應よりレベルが上の学校じゃなくても
「うわ、そんだけこだわってやってるのか」という話もあって、チーム意識なども含めて
もう一度見直さなきゃいけないかなって思う。

コーチ対談 2人


―まだまだ話が尽きないと思いますが今回はこの辺で。
第1回は、新シーズンが始まってからの手応えと、「挑」というスローガンをテーマに
対談をしていただきました。学生コーチの本音を聞くことができてよかったです。
まずは1月の冬六で良い結果を残せるよう、部員全員で頑張っていきましょう!
お二人とも本日はありがとうございました。

今後は学部紹介などの記事もあげていく予定ですので、乞うご期待ください!

(取材日:2019年11月20日)

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